STORY

 

物語

 

映画『ブラッド・ライオンズ』の中心的な登場人物は、南アフリカ人の環境ジャーナリストであるイアン・ミヒラーと、米国人ハンターのリック・スウェジー。映画は、南アフリカにおいて数百万ドル規模の巨大産業である肉食獣繁殖、そしてライオンの缶詰狩り産業の実態を明らかにしようとする二人の旅路を追っていく。

 

南アフリカで1年間の内に射殺されている千頭近い数の飼育ライオンのほとんどは、海外からやって来る裕福なハンターたちによって、「スポーツ・ハンティング」とすら呼ぶことのできない狭い囲いの中で撃ち殺されている。狩猟業者がいかにその行為を正当化するかを、映画は大胆にも露わにする。1999年からこの問題を調査しているイアンは、さらにライオンの飼育繁殖場を訪ね、集中繁殖が動物たちに与える影響を目の当たりにしていく。

 

ライオンの飼育繁殖、子ライオンのペット化、海外ボランティア事業、ライオンの散歩、缶詰狩り、繁殖取引、そして骨取引。

これらの事業は現実に高収益をもたらすため、増加の一途を辿っている。そしてそれら全ての事業が、「保護」「研究」「教育」という名目のもとに正当化されている。

 

並行してこの映画は、食用の狩猟しか経験がないと語る米国人ハンター、リックの姿を追う。ハワイの自宅から南アフリカの缶詰狩りキャンプに問い合わせ、ライオン狩猟権をネット購入したリック。彼は、缶詰狩りを行うハンターたちと同じ行程を辿ることで、自らの目でその現実を確かめようと南アフリカへ旅立つ。

 

映画はトロフィーハンター、狩猟オペレーター、ブリーダー、そして著名なライオン生態学者、自然保護関係者、動物福祉の専門家など、見識の異なる様々な人々からプレデター狩猟産業についての率直な言葉を引き出していく。 そこに浮かび上がるのは、ライオン飼育繁殖がいかに金儲けを目的としたビジネスであるかということ、そして政府をはじめ、正式な狩猟・観光団体の多くも、いかにこの産業の繁栄を黙認しているかという現実だった。オーストラリア政府がアフリカのライオンのトロフィー輸入について全面禁止を発表する場面には、この映画のひそかな希望が垣間見える。

 

映画『ブラッド・ライオンズ』は人々の目を覚まし行動を促す説得力ある作品であると同時に、殺しを目的としたライオンの飼育繁殖を終らせるための、国際的支援に貢献する道も示している。

 

 

製作背景ストーリー

 

2011年、後に『ブラッド・ライオンズ』のプロデューサーとなるピッパ・ハンキンソンは初めて民間のライオン飼育場を訪れた。そこでは100頭近くのライオンが狭い囲いの中で飼育され、その内の多くが明らかに近親交配で、過度のストレスを感じていることもわかった。ピッパはこの体験に深く心を痛めた。 

 

更に詳しく調べてみると、南アフリカ国内の他の飼育場でも8000頭にも及ぶライオンが同様の環境下に置かれ、数百万ドル規模の産業の一端を担っていることがわかった。その大半は缶詰狩り産業や、禁止された「虎の骨」の骨需要を補うためにライオンの骨がアジアに売却されていることを知った。最も衝撃を受けたことは、この産業が合法であるということ、そして、この産業についてよく知る人がほとんどいないということだった。 

 

ピッパはよく、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉を引用する。

「重要なことについて沈黙をしたその時から、我々の人生は終わりに向かい始める」と。

彼女にとってアフリカの野生動物、その中でも特にライオンは最も親近感を抱く存在だった。 

 

飼育ライオンの搾取について人々の意識を高めるには、ドキュメンタリー映画が最も効果的だとピッパは考えた。映画製作経験のない彼女は、まずプロの熟練した映画製作チームを結成することに着手した。更に世界中の個人および団体から多大な支援を獲得しながら、この映画の制作を実現させた。

 

 

キャンペーン活動

 

長編ドキュメンタリー『ブラッド・ライオンズ』は2015年に初公開され、それと同時に<ブラッドライオンズ・キャンペーン>が開始された。この活動は、肉食動物の飼育繁殖、缶詰狩り、ライオンの骨取引、および搾取的な観光事業に対する世界の認識を高めること、そしてそのような事業活動への需要を減らすことで、野生動物を対象とした人間による搾取に終止符を打つことを目的としている。映画上映、ソーシャルメディアの効果的活用、国際的キャンペーンなどを運動の軸としながら、映画の鑑賞者、アフリカへの旅行者、ソーシャルメディアのフォロワーに対して、責任ある選択をするよう呼びかけている。 

 

Photo © Pippa Hankinson